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灰色の記憶

日記 2/26-3/4

2/26(金) 天気:くもり

忘れられる恨みであれば俺だってさっさと忘れていた。恨みなど抱かず生きているほうがよっぽど楽だし憂もないことは分かり切っている。ところが夜中に何度も刺されれば蚊にだって恨みを抱くのが人間ではないか。蚊がぶんぶん飛び回っているのに、それを忘れて寝ろと強いるのは非現実的、机上の空論なのだ。実際、俺の怒りが爆発したのも、この蚊が近くをぶんぶん飛び回っているような状況だったからだ。ひと刺しされたぐらいでは誰も爆発しやしない。何度も何度も刺して来るからこちらだって殺ってやるとなる。俺の場合は相手が蚊でなく人間だったので不幸だった。蚊ならどれだけ虐殺したところで罪には問われないのにね。人間はたとえ一匹でも殺生は許されないんだな。とんだ偽善じゃないか。人命尊しだと、笑わせるなよ。

(中真大『無駄花』)


2/27(土) 天気:晴れ







虚しい。何もかも。


2/28(日) 天気:晴れ

髪を切った。




「梨の子ペリーナ」読了。


3/1(月) 天気:晴れ

何の気力も欲求も無い。無為に過ごしていた。

どうしたらいいんだろうか。別にどうもしなくていいのかもしれない。第一、どうしたらいいかなんて誰も教えてくれないよ。馬鹿だな。

「変わることも変わらないことも悲しいと思ってしまうの」(majiko『グロウフライ』)


3/2(火) 天気:雨

記録を消しても、記憶まで消えるわけじゃないんですね。

「思いだせない事は忘れる事とは違う」という文章を何かの小説で見たけど、思いだせない。つまり、忘れたわけじゃないという事です。

かたちのないものは、往々にして儚いですね。


3/3(水) 天気:晴れ





苦しい


3/4(木) 天気:晴れ

数ヶ月ぶりに病院にいった。

駐車場に梅の木があって、梢に鶯がとまっていた。原民喜の「うぐいす」という童話を思いだした。春先、家の庭の、梅の木の枝にとまりに来るうぐいすがいて、男の子はそれが毎日やって来るのを楽しみにしていたが、ある日父親が写真を撮って、その翌日からうぐいすは来なくなったという。


僕たち、さびしく無力なのだから、他になんにもできないのだから、せめて言葉だけでも、誠実こめてお贈りするのが、まことの、謙譲の美しい生きかたである、と僕はいまでは信じています。

(太宰治『葉桜と魔笛』)


私は弱いので、
悲しみに出遇ふごとに自分が支へきれずに、
生活を言葉に換へてしまひます。
そして堅くなりすぎるか
自堕落になりすぎるかしなければ、
自分を保つすべがないやうな破目になります。

(中原中也『寒い夜の自画像』)


死ぬんじゃありませんか、とぼくが言うと、彼女はすかさず、
「あなたこそ、死にそうですわよ」
と言って、ニッと笑った。その微笑は、ぼくの心にまるで針の様につきささった。

(織田作之助『ひとりすまう』)


生きるか、死ぬか、二つしか、ありやせぬ。

(坂口安吾『不良少年とキリスト』)




何も信じずに生きるなんて、死んでいるのと同じだ、と思った。
















待つ、祈る、信じる。その繰り返しだ。それだけの事だ。それ以外に大事な事なんて、何も無いんだ。それだけだ。本当に、それだけだ。