6/25(土)
人は法を作る瞬間から、法の外に置かれ、同時に法の保護から逃れる。かかる理由によって、なんらかの権力を行使する人間の命は、ごきぶりまたは毛虱の命ほどの値打ちももたない。
(ミシェル・トゥルニエ『魔王(上)』植田祐次訳 みすず書房 p95)
悪と苦痛と死の礼賛が、生への仮借ない憎悪をともなうのは論理的に必然だ。愛───抽象的に説かれた愛は、それが具体的なかたちをおび、形をなし、性欲、エロティシズムと呼ばれるとたちまち、はげしい迫害を受ける。喜びと創造の泉、最高善、呼吸するすべてのものの存在理由は、世俗人と聖職者の双方の頑迷固陋なすべての屑どもから、悪魔的な不機嫌さをもって迫撃されるのだ。
(p96-97)
純粋は生の嫌悪、人間への憎しみ、無への病的な熱情だ。
(p97)
一人しかもたないことは、なに一つもたないことだ。一人をもちそこなうことは、全部をもちそこなうことなのだ。
(p112)
6/26(日)
今やおれは、自分がどのようにしてこの世とおさらばするかを知っている。おれの最期は、おれのなかにある石でできた人間の、その残りの肉と血とでできたものに対する決定的勝利であるだろう。おれの運命がおれをことごとく所有し終わり、おれの断末魔の叫び、おれの最期の吐息がやってきて石の唇の上で死ぬ夜に、それは実現されるだろう。
(ミシェル・トゥルニエ『魔王(上)』植田祐次訳 みすず書房 p118)
彼らはどれも、同じ程度に取るに足りないものに思われた。つまり、たがいに同じくらい重要に思われるのだった。
(p122)
盲目と聾啞の壁を突き破るには、徴がおれたちを立て続けに叩くことが必要だ。世界のどこかではいっさいが象徴であり、比喩であることを理解するには、無限の注意力だけがおれたちに不足している。
(p131)
6/27(月)
水族館にいった。海月がきれいだった。
6/27(月)
・日野啓三『抱擁』(P+D BOOKS 2018.9)
を買った。
6/28(火)
暑い。だるい。
・『中井英夫 虚実の間に生きた作家(KAWADE道の手帖)』(河出書房新社 2007.6)
・『久生十蘭 評する言葉も失う最高の作家(文芸の本棚)』(河出書房新社 2015.2)
・『竹久夢二 大正ロマンの画家、知られざる素顔 生誕130年永久保存版』(河出書房新社 2014.1)
を買った。
6/29(水)
この世のいのちだけが存在ではないのですから
6/29(水)
・武田泰淳『富士』(中公文庫 1973.8)
・芹沢光治良『告別』(中公文庫 1979.1)
・澁澤龍彥『悪魔のいる文学史 神秘家と狂詩人』(中公文庫 1982.2)
・ディケンズ『二都物語(上)』(中野好夫訳 新潮文庫 1967.1)
・ディケンズ『二都物語(下)』(中野好夫訳 新潮文庫 1967.1)
・ゲーテ『若きヴェールテルの悩み』(佐藤通次訳 角川文庫 1950.8)
・オースター『幻影の書』(柴田元幸訳 新潮文庫 2011.9)
・ヘンリ・ミラー『北回帰線』(大久保康雄訳 新潮文庫 1969.1)
を買った。
6/30(木)
・東雅夫(編)『吸血鬼文学名作選』(創元推理文庫 2022.6)
・ジョン・ミルトン『失楽園(上)』(平井正穂訳 岩波文庫 1981.1)
を買った。
7/1(金)
・日野啓三『梯の立つ都市 冥府と永遠の死』(集英社 2001.5)
・日野啓三『地下へ サイゴンの老人』(講談社文芸文庫 2013.8)
・日野啓三『断崖の年』(中公文庫 1999.9)
を借りた。
7/1(金)
もうどこにも行き場がないってことがどういうことか、おまえにわかるか。
(日野啓三「黒よりも黒く」)