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灰色の記憶

日記 5/1-5/31

5/1(月)

僕は出発するというより逃亡しようとしていた。

(大江健三郎『叫び声』講談社文芸文庫 p186)

 

 


5/1(月)

病院にいった。すいていた。血を抜いた。

 

 

 

5/2(火)

通所103日目。

 

 

 

5/3(水)

通所104日目。

 

 

 

5/4(木)

葉擦れの音。鶯の鳴き声。

 

 


5/4(木)

ヘミングウェイ短編集(一)』(大久保康雄訳 新潮文庫 1970.6)を買った。

 

 

 

5/5(金)

通所105日目。

 

 


5/5(金)

・ベン・ラーナー『10:04』(木原善彦白水社 2017.3)

・ペーター・ハントケアランフエスの麗しき日々  夏のダイアローグ』(阿部卓也訳 論創社 2014.7)

・G.ガルシア・マルケス『落葉  他12篇』(高見英一、桑名一博、井上義一訳 新潮社 2007.2)

・『サミュエル・ベケット短編小説集』(片山昇、安堂信也訳 白水社 2015.9)

モーパッサン『水の上』(吉江喬松、桜井成夫訳 岩波文庫 1955.9)

を借りた。

 


古井由吉『槿』(福武書店 1983.7)

日野啓三夢の島』(講談社文芸文庫 1988.5)

・『伊藤整高見順  カラー版日本文学全集28』(河出書房新社 1969.6)

・蓮實重彥『物語批判序説』(中公文庫 1990.10)

・澁澤龍彥『東西不思議物語』(河出文庫 1982.6)

・鈴村和成『ヴェネツィアプルーストを読む』(集英社 2004.2)

・『ボードレール詩集』(佐藤朔訳 白凰社 1966.8)

ホルヘ・ルイス・ボルヘス『砂の本』(篠田一士集英社 1980.12)

を買った。

 

 

 

5/6(土)

立花種久『眠る半島』(れんが書房新社 2013.12)

ニーチェツァラトストラかく語りき(下)』(竹山道雄新潮文庫 1953.4)

を買った。

 

 

 

5/7(日)

過去なんか私にはないだろう  あったこともない

(サミュエル・ベケット『どんなふう』宇野邦一河出書房新社 p76)


みんな失われた  手に入れたこともない

(p102)


言葉なき祈り

(p134)


私一人に関して  私はあいかわらず私の想像の旅  私の中の想像上の仲間を引用する

(p165)


二人の異邦人が責苦を求めて結束する

(p177)


声なしの呪い

(p184)


与えそこね  受けそこね  見つけそこね  届けそこねた言葉の数えきれない痕跡

(p199)

 


情感はそれを生ませたところに生きず、感じた者にだけ生きのこる。他人は僕のなかに生きのこり、僕は他人の中に生きのこる。

(伊藤整『街と村・生物祭・イカルス失墜』講談社文芸文庫 p152)

 

 

 

5/8(月)

もう、自分が本当に死んでいることを知っていた。少なくとも、生きている証拠はなにもなかった。生も死も同じことだった。

(G.ガルシア=マルケス『落葉  他12篇』高見英一訳 新潮社 p22)


それはもはや美貌ではなく、疾病であった。

(p27)


この闇に永遠に慣れなければならないのだろうか?

(p35)


「わたしのために、ひとつだけ噓をついてくれないかしら」

(p96)


落葉はあらゆるものを持って来て、あらゆるものを持って行ってしまった。

(p287)

 

 

 

5/9(火)

通所106日目。

 

 


5/9(火)

多和田葉子パウル・ツェランと中国の天使』(文藝春秋 2023.1)

古井由吉『鐘の渡り』(新潮社 2014.2)

・マフムード・ダルウィーシュ『壁に描く』(四方田犬彦訳 書肆山田 2006.8)

マルカム・ラウリー『火山の下』(斎藤兆史監訳、渡辺暁、山崎暁子共訳  白水社 2010.3)

を借りた。

 

 

 

5/9(火)

ある世界の中にとどまりつつ、同時にその世界を去るということは矛盾しない。

(多和田葉子パウル・ツェランと中国の天使』文藝春秋 p15)


三人称はひとつの救いである。

(p16)


過去自体が三人称である。とりわけ、現在において一人称を演じようとするときは。現在さえ絶え間ない延期であり、輪郭のはっきりしないグラグラする写真である。さまざまな時間が頭の中で衝突し、ズキズキする痛みをもたらす。

(p57)


「なぜきみの心臓は疲労困憊しているんだい?」
「心臓をいつも隠喩として酷使してきたから」

(p87)


「「目標」という語を聞くと本当に気が狂いそうになるよ」

(p91)


手紙を書くことで過ごした夜は、思い出の中のほかのどの夜にもまして輝いている。

(p96)


人間には大きな一方的な愛が必要であり、愛の不可能性が人生を豊かにしてくれるのだ。

(p96)


孤立は偽装された死罪だ。

(p100)


ある人が別の人に比べて生きる価値が少ないという考え自体が、人権に対する無知を証明している。

(p103)

 

 

 

5/10(水)

通所107日目。

 

 

 

5/11(木)

・ポーリーヌ・レアージュO嬢の物語』(澁澤龍彥訳 角川文庫 1973.3)

・『月下の一群  堀口大學訳詩集』(新潮文庫 1955.6)

古井由吉『眉雨』(福武文庫 1989.10)

・大庭みな子『がらくた博物館』(文春文庫 1988.2)

大岡昇平中原中也』(講談社文芸文庫 1989.2)

伊藤整『変容』(岩波文庫 1983.5)

ジャン・コクトー『阿片  或る解毒治療の日記』(堀口大學訳 角川文庫リバイバルコレクション 1952.4)

ジャン・コクトー『山師トマ』(河盛好蔵訳 角川文庫リバイバルコレクション 1955.7)

を買った。

 

 

 

5/12(金)

通所108日目。

 

 


5/12(金)

小川国夫『アフリカの死』(集英社文庫 1983.5)を買った。

 

俺には、型に嵌ると安心する人間が解らないんだ。

(小川国夫『アフリカの死』集英社文庫 p51)


努めて明るくしていないと、錯乱の中へ押し流されそうな気がした。

(p81)

 

 

 

5/13(土)

大岡昇平『花影』(新潮文庫 1963.6)

森茉莉恋人たちの森』(新潮文庫 1975.4 )

・フィツジェラルド『ラスト・タイクーン』(大貫三郎訳 角川文庫リバイバルコレクション 1977.9)

・イエーツ『鷹の井戸』(松村みね子訳 角川文庫リバイバルコレクション 1953.12)

を買った。

 

 

 

5/14(日)

シルエット、それは、今にいたるまで、私にとって、約束を意味しているの。

(ペーター・ハントケアランフエスの麗しき日々  夏のダイアローグ』阿部卓也訳 論創社 p17-18)


時が一つの肉体、一つの魂になり、どの始めと終わりも永遠をあえぎ求める。

(p37)


ひとは、愛するものを、ことの始めから失っているんだ。永遠に。失わなかったとしても。

(p62)


​──ああ、秋、どの影もひとを騙す。何かがいるように見せかける。何かがいないことを思い出させる。苦しみ、痛み、何かを逃してしまったことを思い出させる。

(p64)

 

 

「地上の暗さは性質が悪いですな。なぜあんたの詩はこう白いのかね」
「心が三十もの海でいっぱいだからですよ」

(マフムード・ダルウィーシュ『壁に描く』四方田犬彦訳 書肆山田 p18-19)


地獄に墜ちてもいいよ。
きみが好きだ。

(p35)


墓とは詩だ、
墓は風でできている。

(p56)


冬の煙を信じてはならない。

(p62)


審判の門では苦痛を感じない。時間も感情もない。

(p65)


意味はわたしを焼き、消える。

(p68)


天国への道があきらかになるにつれ、
未知が終末を露にするにつれ、
賛美歌は砕け散り、祈りは腐って世俗の散文となる。

(p75-76)


言語という自分に与えられたすべてにおいて、わたしは異邦人だ。

(p76)


暗示と表現の塵がわたしを空虚にした。

(p79)


わたしの人生には  自分の終わりと始まりを繋ぐだけの時間がもはやない。

(p85)


心の水が枯れ尽きたとき、美学はいっそう抽象的となる。

(p126)

 

 

 

5/15(月)

寒い

 

 

 

5/16(火)

通所109日目。

 

 

 

5/17(水)

通所110日目。

 

 


5/17(水)

・石沢麻依『月の三相』(講談社 2022.8)

・川村二郎『アレゴリーの織物』(講談社文芸文庫 2012.3)

を借りた。

 

大江健三郎『芽むしり  仔撃ち』(新潮文庫 1965.5)

野口冨士男『感触的昭和文壇史』(文藝春秋 1986.7)

を買った。

 

 

 

5/18(木)

吉田精一芥川龍之介』(新潮文庫 1958.1)を買った。

 

・『ヴァルター・ベンヤミン/グレーテル・アドルノ往復書簡 1930−1940』(編:H・ローニツ、C・ゲッデ、訳:伊藤白、鈴木直、三島憲一 みすず書房 2017.11)

・『リルケ詩集』(片山敏彦訳 みすず書房 1962.4)

を借りた。

 

 


5/18(木)

どんな悪い出来事が起きたとしても、掘り崩すことのできない友情の礎石があることを、わたしとともに信じてくださいますか。わたしのことをひどく長く待っていなければならないように感じることがあっても、どうぞお赦しください。

(『ヴァルター・ベンヤミン/グレーテル・アドルノ往復書簡 1930−1940』編:H・ローニツ、C・ゲッデ、訳:伊藤白、鈴木直、三島憲一 みすず書房 p18〈グレーテル〉以下、どちらによる文章かを〈〉内に記載)


わたしの孤独はまたほとんど完全なものになっています。単に表面的なものとはいえ、あなたの不在はわたしにとって破滅なのです。あなたがそこにいらっしゃるということは、たとえそれが非常に遠い場所であったとしても、わたしにとって大きな慰めです。

(p18-19)〈グレーテル〉


もう一度、心からお願いしておきますが、わたしがあなたのためにできることがあったら、今あなたが感じてらっしゃる抵抗感や遠慮に逆らってでも、少し早めにわたしに知らせてくださいね。なぜって、万一あなたの身に何かがあったら、わたしは自分のことを絶対にゆるせなくなるでしょうから。

(p32)〈グレーテル〉


でもわたしはとんでもないエゴイストですね。だって、あなたの孤独はもっと比べものにならないのに、わたしのちっぽけな悩みを話しているのですから。

(p37)〈グレーテル〉


今日はあなたの誕生日ですね。わたしは一日中あなたのことを考えていました。いろいろすてきなこと、いいことがありますように。とくにこれからの一年がこれまでの一年よりあなたにとって憂いの少ない年になりますように。

(p135)〈グレーテル〉


破滅のあらゆる苦しみと甘さを嘗め尽くしました。

(p160)〈グレーテル〉


思い出が残ることが許せる程度には、何もかもが卑小で不快なことになったりしなければいいのに。

(p163)〈グレーテル〉


苦悩は人生が満ち足りているときに抱くものですから。

(p165)〈ヴァルター〉


でも、結局のところ、友情と愛情のあの微妙な境界線はどこにあるのでしょうか。

(p174)〈グレーテル〉

 

 

 

5/19(金)

通所111日目。

 

 


5/19(金)

生の最も決定的な瞬間が詩を通じて記憶に凝縮されている時、その詩の重さは、客観的な価値を超えていよう。

(川村二郎『アレゴリーの織物』講談社文芸文庫 p17)


一見無邪気な単純な同語反復は、むしろ、拒否の強い意志を示している。

(p21)

 

 

 

5/20(土)

雨。何もやる気が起きない

 

 

 

5/21(日)

短歌を書いている

 

 

 

5/22(月)

北千住に行った

 

 

 

5/23(火)

通所112日目。

 

 


5/23(火)

リルケ『ドゥイノの悲歌  改版』(手塚富雄岩波文庫 2010.1)を買った。

 

 

 

5/24(水)

通所113日目。

 

 

 

5/25(木)

『英国クリスマス幽霊譚傑作集』(創元推理文庫 2022.11)を買った。

 

 

 

5/26(金)

通所114日目。

 

 

 

5/27(土)

閻連科『四書』を読んでいる。

 

 

 

5/28(日)

残雪『カッコウが鳴くあの一瞬』(近藤直子訳 河出書房新社 1991.6)を借りた。

 

 


5/28(日)

あらゆる分裂の狂乱が  けし飛んで、
我が周りには  緑の森の親しみ深い落ちつきが
金色の日の翼に乗って  ゆるやかに揺れている。

(『リルケ詩集』片山敏彦訳 みすず書房 p18)

 


とはいえ正義がなされると
世界は崩落してしまう。

(アン・カーソン『赤の自伝』小磯洋光訳 書肆侃侃房 p42)


子どものころのように空をじっと見渡してるけど、これは何の夜明け?

(p87)

 

 

 

5/29(月)

・サミュエル・ベケット『伴侶』(宇野邦一訳 書肆山田 1990.4)

シモーヌ・ド・ボーヴォワール『おだやかな死』(杉捷夫訳 紀伊國屋書店 1995.2)

スタンダールカストロの尼』(宗左近訳 角川文庫リバイバルコレクション 1970.11)

・サンドラール『世界の果てまで連れてって』(生田耕作訳 福武文庫 1988.9)

中井英夫『薔薇への供物』(河出文庫 1990.5)

を買った。

 

 

 

5/30(火)

通所115日目。

 

 


5/30(火)

いつのころからか、生命はあるひとつの方向に向かって果てしなく、虚しく単調に延びていくようになった。それをはっきりと区切るしるしは何もなかった。

(残雪『カッコウが鳴くあの一瞬』近藤直子訳 河出書房新社 p90)

 

 

 

5/31(水)

通所116日目。

 

 


5/31(水)

・鈴木雅雄『シュルレアリスム、あるいは痙攣する複数性』(平凡社 2007.12)

・サミュエル・ベケット『蹴り損の棘もうけ』(川口喬一訳 白水社 2003.10)

・『短篇で読むシチリア』(編訳:武谷なおみ みすず書房 2011.1)

ダニイル・ハルムス『ハルムスの世界』(増本浩子、ヴァレリー・グレチュコ訳
ヴィレッジブックス 2010.6)

ウィリアム・バロウズ『ゴースト』(山形浩生河出書房新社 1996.6)

エンリーケ・ビラ=マタス『ポータブル文学小史』(木村榮一平凡社 2011.2)

ペトル・クラール『プラハ』(阿部賢一成文社 2006.7)

・『十六の夢の物語  M・パヴィッチ幻想短編集』(三谷惠子訳 松籟社 2021.10)

・ボフミル・フラバル『厳重に監視された列車』(飯島周訳 松籟社 2012.9)

・ボート・シュトラウス『マルレーネの姉  二つの物語』(藤井啓司訳 同学社 2004.8)

を借りた。

 

 


5/31(水)

死を子供のように胎内で養い育てること、ただし外にはけっして出さないこと。

(ボート・シュトラウス『マルレーネの姉  二つの物語』藤井啓司訳 同学社 p12)