7/2(金)
裏切られた、というのは身勝手な言葉だと思う。互いが互いを認知していて、信じ合っているのならともかく、一方的に自分が信じているだけなのに、傷ついたとか、失望したとか、裏切られたなんて言葉を並べて、責任を他者に転嫁するのは、可笑しいと思う。失望したくなければ、最初から期待しなければいいだけの話だ。勝手に行っていることなのだから、見返りなど微塵も期待してはいけない。
ずっと、なんてないんだから、ないんだからさ。
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死のあらゆる場合を考へ続けることが習慣になると、私の生活は生命へよりも、死の方へ近づいて行つた。
7/3(土)
人間が理解できるのは、脳のとりうる配置のごくごく一部であるにすぎない。自分の慣れ親しんだ状態を正気と、理解できない状態を狂気と大雑把に呼んで満足している。狂気という語の存在は、脳には理解の不可能な状態があることを示すだけであるのに。脳そのものには狂気という状態はなく、ただ物質として乱れるだけだ。狂気とは、見る者の側の頭が勝手に認定する状態だ。
7/4(日)
あたりまえの生活をしているのである。かくべつ報告したいこともないのである。
(太宰治『一日の労苦』)
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不意に思い出しては苦しくなる。でも、苦しくなるからといって、忘れたいわけじゃないから、別にいいんだよ。笑ってくれ。
7/5(月)
祖母に会った。多分4ヶ月ぶりだと思う。また会いにいきたい。
好意を踏みにじるような真似はしたくない。
死ぬことは怖くないけど、いつ死ぬのかわからないのは怖い。死ぬ動機の一つにあると思う。
何もできなくても、一日一日を乗り越えていきたい。やり過ごすのではなく、乗り越える。
7/6(火)
図書館に。
リラダン『未来のイヴ』が気になってるけど、文庫で1980円!ひー。でもいずれ買います。
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一つの誤解もない人生なんて、ないよ。最悪、全部誤解かもしれないんだから。
いや、最悪かどうかは、本人次第だね。
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老いて生きるということは醜いことだ。自分は少年の時、二十七、八歳まで生きていて、三十歳になったら死のうと思った。だがいよいよ三十歳になったら、せめて四十歳までは生きたいと思った。
(萩原朔太郎『老年と人生』)
7/7(水)
わたしはある譃つきを知っていた。彼女は誰よりも幸福だった。が、余りに譃の巧みだったためにほんとうのことを話している時さえ譃をついているとしか思われなかった。それだけは確かに誰の目にも彼女の悲劇に違いなかった。
7/8(木)
伊藤計劃×円城塔『屍者の帝国』読了。難しい上に頁数が多かったけど、面白かった。
「あんたは、生命とはなんだと思う」
笑い飛ばされるかと思ったが、振り返ったバーナビーは不思議そうな顔で淡々と告げた。
「性交渉によって感染する致死性の病」
(本文より抜粋)
『虐殺器官』も読まないとな。
メモ
・トーテンアウベルク 屍かさなる緑の山野(三元社)
/エルフリーデ・イェリネク
・チェスの話(みすず書房)
/シュテファン・ツヴァイク
・ナレンブルク 運命に弄ばれた人々の城(林道舎)
/シュティフター
・ブレックヴァルトが死んだ(未知谷)
/ハンス・エーリヒ・ノサック
・性の夜想曲(風濤社)
/ヴィーチェスラフ・ネズヴァル、インジフ・シュティルスキー
・蛇の言葉を話した男(河出書房新社)
/アンドルス・キヴィラフク
・吸血女の恋(社会思想社)
/ゴーチェ
・エペペ(恒文社)
/カリンティ・フェレンツ
・マルペルチュイ(国書刊行会)
/ジャン・レー、ジョン・フランダース
・いにしえの魔術(アトリエサード)
/アルジャーノン・ブラックウッド
・塔の中の部屋(アトリエサード)
/E.F.ベンスン
・天使の狂詩曲(未知谷)
/澤井繁男
・月とハーモニカ(審美社)
/田中芳子
・オトラント城(研究社)
/ホレス・ウォルポール
・雲(東京創元社)
/エリック・マコーマック
・言葉人形(東京創元社)
/ジェフリー・フォード
・十四番線上のハレルヤ(国書刊行会)
/大濱普美子
・迷宮の飛翔(河出書房新社)
/蜷川泰司
・少女ヴァレリエと不思議な一週間(風濤社)
/ヴィーチェスラフ・ネズヴァル
・ムントゥリャサ通りで(法政大学出版局)
/ミルチャ・エリアーデ
・模型夜想曲(アーティストハウス)
/白鳥賢司
・夜の体験(パロル舎)
/マルセル・ベアリュ
・夜を浚う(鳥影社)
/森昌文
・スペードのクイーン/ベールキン物語(光文社古典新訳文庫)
/プーシキン
・くらやみざか 闇の絵巻(西村書店)
/天沼春樹
・口のなかの小鳥たち(東宣出版)
/サマンタ・シュウェブリン
・雷の子(編集工房ノア)
/島京子
・放浪者メルモス(国書刊行会)
/C.R.マチューリン
・泡沫夢幻(未知谷)
/石原悟